どうせならメスブタ!とか言って罵り合う展開のほうが面白いんだが


 2,30人ぐらいだろうか、かなり大所帯の知人たちと電車に乗っている。
 鎌倉みたいな場所に行くと朝早くから結構年配の方がチェック系のシャツ(?)にパンツ、スニーカーやウォーキングシューズに、帽子を被り、リュックサックを背負って、若者よりずっと元気に歩いてらっしゃるのを見るけれど、なんだか皆そんな格好だ、私を含めて。旅行で山歩きか何かして遊んできたらしい。周囲の知人と談笑していた私は、ふと乗車口の傍に立つ男性と目が合った。
 …え/な/り、か/ず/き*1だ。

 瞬時に懐かしいような、照れくさいような、切ないような、苦いような、複雑な感情があふれてきた。
 私とえ/な/りは過去、もう何年も前に付き合っていたのだが、向こうに「もっと好きな人が出来」て、別れた(夢の中の話ですよ。しかしファンじゃないのに何故え/な/りかなあ…)。当時のことがブワっ、とよみがえり、胸がいっぱいになる。
 …と今、文章を書いていて、竹/内/ま/り/やの「駅」を思い出した。♪懐かしさの一歩手前で 込み上げる苦い思い出に 言葉がとても見つからないわ…幸い、夢の中の私は苦い思い出よりも懐かしさのほうが勝ったようで、声をかけようと笑顔を向けた。向こうもこちらと同時くらいに気が付いたらしく、驚いた顔をして歩み寄ってくる。
 ひさしぶり。/元気だった?/この辺を出歩くなんて珍しいよね。/どこかに[出かけてる/出かけた]の?/僕は終点で待ち合わせがあって。
 他愛ない会話を交わすうちに、後ろのほうでざわめきが起こった。振り返ると、知人たちの誰かが気分を悪くしたらしく、しゃがみ込んでいる。
 え/な/りを放置して、人ごみを掻き分けそばに駆け寄ってみると、しゃがみ込んでいるのは裕香ちゃん(仮名)だった。青い顔で汗を流している。吐き気ももよおしているようだ。幸い近くの人が席を空けてくれたので、彼女は横になって目を瞑った。私は濡れタオルを用意したり(どうやって用意したんだろう?)、窓を開けて風を入れたりする。気が付くとえ/な/りが後ろから躊躇いがちに・しかし甲斐甲斐しく、替えのタオルを差し出したりその他諸々手伝ってくれた。あら、見知らぬ人にも親切じゃないの。感心感心と思ったのだが、そういうことではなかったのだと後から知ることになる。


 終点の駅に着いた。裕香ちゃんはどうしても外せない約束があるとかで、すぐに出発しなければならないという。横になったおかげで大分楽になり、顔色も良くなってきたが、ちょっと心配だ。偶々方向が同じなので、私は皆から仰せつかって彼女を送ることになった。
「すみません。もう大丈夫だと思います」「そーだねぇ。まあ私もこっちに行くから、そこまで一緒に歩くよ。」
二人で息を切らしながら険しい坂を登る。曲がり角の突き当たり部分が階段の踊り場のようなちょっとした広場になっていて、私たちはそこで足を停め、汗を拭く。見下ろすと、この町の入り江の向こうに、天気の良い日のひたすらに青い海が広がっていた。
「もう、すぐそこです。」 20メートルくらい先に、裕香ちゃんの目的地らしい小奇麗な家が見えてきた。玄関から上品な女性が、門に向かおうとする姿が見える。その時後ろから、人の駆けて来る足音が聞こえ、さらにその人物が「おーい」と呼びかけてきた。
 この声は…。振り返る。え/な/り?
 裕香ちゃんが笑顔で手を挙げた。へ?知り合い?

 
 ――ばばばばばっと話が繋がった。


 ああ、昔え/な/りが、私より「もっと好きな人が出来た」って言ってたのは裕香ちゃんのことだったんだね。え/な/りの待ち合わせの相手は裕香ちゃん。裕香ちゃんが言う「どうしても外せない約束」ってのは、え/な/りの実家にご招待されてたのか。この様子だと現地集合っぽいけども。電車で気分悪くなったのは、緊張してたのかしら。え/な/りが電車の中で心配して甲斐甲斐しく手伝ってきたのは、見知らぬ人に対するもんじゃなかったのか。その割に後ろから躊躇いがちにしか寄ってこなかったのは、この三人で顔合わせるのが気まずかったのね。幸い裕香ちゃんはすぐに横になって、え/な/りに気付かなかったし。修羅場になるとでも思ったのか?私ってそういうイメージなのか?ていうか今更修羅場?あのさ、ちょっと、うぬぼれてないかい?…でもって、駅から後ろをついて来てたけど、いよいよお家に近くなった上に、たぶんお母様だよね、アノ人。お母様が玄関から迎えに出てきちまったのが見えたもんだから、ここでややこしい事になっては一大事と、ようやく万一の為にコントロール可能なように自分が出てきたと。私がえ/な/りと裕香ちゃんのこと分かってないのは気付いてたろうけど、実家に裕香ちゃんが訪ねてるのを見られたらもしやと思った?でもそんなん言ったら、裕香ちゃんがここに来る途中の会話で、え/な/りの名前出す可能性は考えんかったのかね。だいたい私アンタの実家の場所なんて知らんよ。あるいはお母様と裕香ちゃんの会話を聞いた私がぶち切れるのを恐れたとか?よぅ分からんなあ。
 たははは…はぁ。



 私が一人得心している間に、裕香ちゃんはお母様に挨拶をすませ、旅行のお土産だと言って異様に大きな(なんか5センチくらいはあるんだよ)淡水パールのイヤリングや貝殻細工を渡していた。格好は明らかに山歩きなのに、この土産を見る限り、私たちが行ってたのは志摩かどこかなんだろうか。
 ふと、お母様が後ろにいる私に気付いた。え/な/りがちらりと怯えた目を向けた。まったくもう。
「あっ、こんにちは。私、お二人の友人で榎元(仮名)といいます。方向が同じだったんでここまで一緒に来させてもらってました。じゃ、裕香ちゃん、またね!」
 視界の端に胸をなで下ろすえ/な/りが見えた。まったくもう。
 私としては、裕香ちゃんの笑顔を見ていたら、いちゃもんつける気には全くなれなかったのだ。そもそも今更すぎる話だしな。あんな風に恐れられるほうが腹立たしいよ全く。しかしまあ、なんと世界は狭いことかと思ったよ。
 どうぞ末永くお幸せに、と、腹に一物無しに、私は祈った。  ――(はてな夢日記

*1:同人活動を行う娘さん?のような書き方(○/○/○)をこの日記でするのはかなり意味が無いと思う。のだが、たまにリンク元をチェックすると芸能人氏名のはてなキーワード経由でのアクセスが思いのほか有るようで、明らかにお求めの情報は無いであろう当日記に誰かを煩わせるのは心苦しいのだ。試しにしばらくこういう書き方をしてみようと思う。