小僧を追いかけて

 佐川急便のマークのような不思議な小僧が、すごいスピードで街を駆けて行く。目的地は分からない。皆、彼がどこに行くのか知りたがるが、追ってもすぐに撒かれてしまうのだ。私は今日こそ最後まで彼について行く決意をした。
 駅を抜け、商店街を駆け抜け、庄屋さんの蔵に飛び込んだ佐川小僧。ああ、裏口から抜けられて撒かれてしまう!私は遠回りになるのは分かっていたが、躊躇せず1本先の道に向かって駆けた。この道のアーケードを抜ければ、見通しの良い河原や土手、原っぱが広がり、必ず小僧が見えるはず――いた!向こうの土手沿いの道を小僧が駆けていく。私の走る道は彼より1本左だが、この見晴らしなら小僧を見失う心配は無い。それに、500メートルも走れば、我々の道は横切る国道でつながる筈だ。
 しかし国道までやって来たものの、私の走っていた道は少し低い道だったので、階段を上がらなければならなかった。ここまで上手く追いかけたのに、この間に見失ったらどうしよう…焦る私は能力以上に急いで駆け上がる。途中、「楽しかったね!」と談笑しながら降りてくる若い女性の2人連れとすれ違った。
 階段を上りきると、左手に大きなコロシアムが見えた。そして、中央にリングが。なんというか、「ファイトクラブ」のような地下格闘技場?(地上にあるけど)らしい。…ああ、さっきの女性が談笑してたのはこれか。小僧がいつも向かっていたのはここだったんだ…と私は確信した。
 もっとよく見ようとリングに向かって歩むと、左右からもみくちゃにされ、何時の間にかボクシングのグローブを付けられた。そしてリングに待つ異国の大男。なんで私が闘うことになってるの!?戸惑う私にお構いなしに、観客のボルテージはあがる一方だ。絶体絶命の私。  ---(はてな夢日記