陰謀の動物園

<プロローグ>
 大きな動物園に憧れがある。とりあえずズーラシア旭山動物園には死ぬまでには一度行っておきたいなァと思う。
 それが影響しているのか、夢に出てきたのはとんでもない規模の動物園だった。園内は、サバンナのごとく広大な草原・グランドキャニオンのような渓谷が広がり、とんでもなく大きな区画ごとに、テーマに沿った動物が放たれている。移動手段は長距離モノレールだ。こんな凄い動物園があったとは…!大興奮で頭に血がのぼる。どうやら私は研修旅行だかなんだか、何らかの「団体で行動する」類の旅行でこの場所にやって来たようだ。

<嵐の予感>
 さて最初の区画に移動するか、とモノレールに乗り込んだ一行だったが、出発時刻までに少しばかり余裕があった。まだ閉まらないドアからぼんやり外を眺める私。
 すると突然、眼の前にどこぞの空軍機(エアフォースワンみたいな感じ?でも大統領は乗ってなかったからエアフォースワンとは言わんのか。)が、降下してきた。
 夢の中では何の疑問も無くそれが空軍機だと理解しているのだが、その形状はロケットを縦に押しつぶした感じで、UFOにイメージされるような、不可解な動きをするものだった。空軍機は蒸気を上げながら縦に一回転(でんぐりがえり)し、派手に降り立った。どうやら、関係者らしきお偉いさんが、我々が乗り込んでいるモノレールの便に間に合うように、急いでやって来るために空軍機を使った…という事らしい。そんな事ならモノレールではなく直接空軍機で園内を回れば良いのに。と今なら思うが夢の中なので何の矛盾も感じず、ただただスゲー!!と感嘆する私。


 こんな派手な登場をするのは一体誰か、と思っていたら、空軍機から降りて来たのは細身の白人女性。金髪でショートカット。私は彼女の事を、現米国務長官コンディ・ライスのような人物だと認識しているようだ。
 私はコンディ(的なその女性)の事を特に好きなわけでもなかったので、へぇーとしか思わなかった。が、突然、隣にいた友人が興奮して、コンディ(的な女性)の元へと駆け出した。必死に握手を求める友人と、笑顔で答えるコンディが遠くに見える。
 いやはや、よもや友人がこんなにコンディ好きとは知らなかったが、頬を上気させて喜んでいる彼女の姿を見ていると、何だかちょっと羨ましくなってきた。「ここは私も駆け寄って握手してもらうべきだろうか。」と迷っていたのだが、コンディ(もどき)がこちらに向かって歩いて来たのでその必要がなくなった。どうやらこの車両に乗り込むつもりらしい。
 コンディは要人にしては何故だかとても愛想が良く、ドアのそばに立っていた私にも笑顔を振り撒き、「Nice to meet you !」と手を差し伸べてきた。私はビビリながら「ナイストミーチュー」と言い、握手を返した。コンディはその後も何かペラペラと喋りかけてくれたのだが、私はヒアリング出来ず、ただ馬鹿面を晒してエヘラエヘラと笑ってみた。


 コンディが乗り込むと、モノレールは最初の区画へ向けて出発した。モノレールなのでさすがに早い。すぐに目的の区画に到着した。乗客は興奮しながら一斉に車両を降りる。広い園内の事でもあり、コンディとはすぐに、はぐれてしまった。

未知との遭遇
 さて、この園のパンフレットを確認してみる限り、この区画は本来、猿類が集められた区画らしい。「らしい」というのはどういう事かというと、猿のような動物も居るには居るのだが、ほとんどが何やら訳の分からない動物ばかりなのだった。
 眼の前には一本、見学者のための広い歩道があり、左右に動物が居るという寸法だ。
 まず左手の動物に目を向けると、それは黒い毛に覆われ二足歩行をする、猿と言えば猿に近い形状をした不気味な生物だった。遊歩道の左手はどのような様子なっているのかというと、赤土の土地が深くえぐられており、さらに手すりが付いていて動物がこちらにやって来られないように細工されているのだが、そこに居るモノたちは頭が良くかつ器用である為、難なく地面を這い上がり、手すりに腰掛けて、こちらを見てニヤニヤと笑っている。
 それではと遊歩道の右手を見ると、手すりも柵も施されていない剥き出しの状態にはるか彼方まで砂漠が広がっている。そこをスフィンクスのような形状の大型生物が群れを成し、牙をむき出して吠えながら、猛スピードで駆け抜けて行くのだった。


 とりあえずこの区画はかなり危険であると判断し、我々は全力で遊歩道を駆け抜けた。左手の生物が歯をむき出して嘲笑っている様子なのが恐ろしく、気にはなったが、ともかくも駆けているうちに周りの風景が変化してきた。ヘンな動物も見なくなった。
 赤土や砂漠ばかりだった光景に次第に緑が増してゆく。前方から左手にかけては、水辺の風景が広がり始めた。瑞々しい緑色の中にフラミンゴが群れを成している。右手には草原が広がりはじめ、ひたすら真っ直ぐに続いていた遊歩道が草原側に曲がり始めた。とても美しい情景で、さっきまでの恐怖が少し和らいだ。

<驚愕の事実>
 すると、草原の向こうから、カウボーイちっくな服装の2人の男が、馬を走らせやってくる。我々の側まで来た彼らは馬を降り、「なぜ君達はこんな危ない所に武器も持たずにやってきたのか」と問うた。私は「動物園だと思ってワクワクしてやって来たのであり、よもやこんな場所だとは思わなかった」旨を説明する。カウボーイ達は我々の無知を嘆いた。本来、この一帯は「動物園」に出来るような安全な地域ではないらしいのだが、その事は営業上、ひた隠しにされているらしい。
 そしてこの土地は現在、この動物園を作った黒幕から、非居住地域として指定されているそうなのだが、彼らカウボーイ達は洞窟などに身を潜め、レジスタンス活動をしているらしい(なんだかよく分らない話だが夢なので…)。

<エピローグ>
 さらに彼らから話を聞くところだったのだが…目が覚めた。